大会長挨拶

 このたび、日本リハビリテーション連携科学学会第26回大会を、2025年3月15日(土)~16日(日)に開催させていただくことになりました。このような機会を与えていただきました理事長をはじめ、役員、会員の皆様に感謝申し上げます。

 第26回大会は、「人々のQOLと健康に豊かさをもたらす多職種連携」をテーマとしました。健康の定義としては、世界保健機関WHO憲章の前文がよく使用されます。「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態にあること」です。ここでの、「満たされた状態」とは、原文では”well-being“となっており、つまり、well-being(ウェルビーイング)とは、「心と体と社会に良い状態」を指します。
 また、リハビリテーションが目指すものは、「その人らしい生活を送ることができる」ことです。その人らしい生活とは、様々なライフステージの中で変化するものであり、かつ、その人を取り巻く人と社会との繋がりの中で、達成されていくものと言えます。したがって、人がその人らしく健康でいるためには、社会も健康であり、それが人々の豊かさや幸せにつながっていくと考えています。
 さらに、医療・福祉・介護職は、対象者のウェルビーイングを考え、支援することは得意ですが、自分たち自身の事は二の次になってしまうことが多いのではないでしょうか。本学が、この多摩市に開学して13年が経ちました。日ごろの地域活動の中では、専門職=支援する側、地域住民の方=支援される側、というものではないことを強く感じています。学生たちの世代間交流や地域でのボランティア活動の際には、地域住民の方が、学生や私たちを支援してくださっています。

 テーマにあります「人々」とは、地域社会に住む、地域社会に関わる全ての人が対象であるという解釈です。社会保障制度上では、高齢者に対しては介護保険法、障害者に対しては、障害者総合支援法が制定され、2024年度は医療保険制度と合わせてトリプル改正がなされ、制度の整備はされてきています。しかし、制度のみではすべて対応することはできず、制度・分野ごとの「縦割り」や「支援する側」「支援をされる側」という関係を超えて、地域住民や地域社会の多様な主体が参画することが重要です。健康で心豊かに、生きやすい地域を目指す上では、まずは、それぞれが自分のことを大切にし、周りの人と連携し合い、課題を解決する姿勢が重要だと考えました。
 そこで、本学会をこの多摩の地で地域社会の課題について一緒に学び、考え、議論する場、人と人を繋げる連携を考える機会、これからの10年を考える契機としたいと思います。

 都内とはいえ、都心からは若干遠いですが、緑豊かで空気の綺麗な地域です。本学は多摩ニュータウン最盛期に作られた小学校をリフォームしております。気候次第ですが、校内の50年選手の桜も開花してくれるかもしれません。ぜひ多くの方のご参加を心よりお待ちしております。

日本リハビリテーション連携科学学会
第26回大会
大会長 吉井 智晴
(東京医療学院大学保健医療学部)